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今回の<一筆投稿>は、結構長文になりましたので、何回かに分けて連載させてもらいます。興味のある方はご一読いただければまことに幸いです。
■■はじめに■■
“ ワー グ ナー ”、良い響きです。もちろん名前だけではありません。メロディはもちろんのこと、オーケストレーションが凄いのです。「歌劇『タンホイザー』」の序曲を聴けば一目瞭然ですが、その重厚さが荘厳さに繋がっていくので、なんともたまらない。そこにワーグナー音楽の神髄があるのだろう、と思ったりする。
と、出だしからいきなり肝の部分に触れてしまった。
ハナシを戻して前置きから始めさせてもらいます。
当初、本文は「ワーグナーとその音楽」というタイトルでワーグナーの代表的な歌劇・楽劇と、その中にでてくる合唱曲をなるべく簡単・簡潔に紹介しようと考えていたのですが、いろいろ調べていくと人間ワーグナーが面白過ぎるのでそれだけでは済まなくなったのです。なので、書き始めるとあれもこれもと筆者のいつも悪い癖がでてしまい結構な文量になってしまった。ということで、タイトルも「ワーグナー、その人、その音楽、・・・」という名称に変更した次第です。
■■リヒャルト・ワーグナー■■
ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー(Wilhelm Richard Wagner) 1813.5.22~1883.5.22
19世紀のドイツの作曲家、指揮者でもあり思想家でもある。
ロマン派歌劇の頂点であり、また「楽劇王」の別名で知られる。ほとんどが自作歌劇で台本を単独執筆し、理論家、文筆家としても知られ、音楽界だけでなく19世紀後半のヨーロッパに広く影響を及ぼした中心的文化人の一人でもある。(ウィキペディア)
ジョルジュ・ビゼーは、ワーグナーの世界は官能、愛、優しさに満ち溢れていると評し、ロマン・ロランは、文学、哲学、絵画全ての基準はワーグナーにあると称賛している。
■ワーグナーの魔力
筆者はワーグナーの音楽を年に何回か無性に聴きたくなるときがある。
ちなみに、好きなベートーベンの「第九」ですら、年末に指揮者違いのCDを2,3枚聴く程度で、マーラーなども好みだが少々重たいので気が向かないとディスクに手が届かない。交響曲のジャンルでは、たとえばブラームス、シューベルトなどは、「この前いつ聴いたのかなあ・・・?」、という程度。それに比べるとワーグナーは聴く頻度がかなり高い。
“なぜか!?”ワーグナー好きは、よく「ワーグナーの音楽には“魔力”がある」と言う。実際それ以外の理由は見当たらない。またワーグナー音楽を“麻薬”だとも言う。おっしゃるとおり。だから、ときどき、ただただ無性に聴きたくなる。要するに、“禁断症状”みたいなものです。
ということで、筆者は結構思い入れのある“ワグネリアン” だと勝手に思っている。
いささか的外れなたとえになるが、一番好きな男声合唱団(グリークラブ)は、と聞かれたら、躊躇わず慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団(以下慶応ワグネルと略す)と答える。理由は単純。“ワグネル”だから!??
■ワグネリアンとは
“ワグネリアン”とは、言うまでもなくドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーの音楽に心酔している熱狂的なワーグナー・ファンです。その音楽は非常に癖があり、アクが強い。しかし、いったん好きになってしまうと、それが快感に変わり、聴かずには居られなくなる。そうなると、立派な“ワグネリアン”。考えようによっては極めて“危ない音楽”かもしれない。
ワーグナーの歌劇・楽劇はかなり長大なため、“よーし、聴くぞ!”と気合いを入れなければ鑑賞できる代物ではない。筆者なんぞは、気合いを入れていても大体途中で寝てしまっている。鑑賞するのにはかなり手強い。
だから、結構思い入れのある“ワグネリアン”と自称するものの、あまり大きな声では言えないのです。
という訳で、筆者は専らハイライト盤とかいわゆる管弦楽曲集としてまとめられているCDを好んで聴いている。有名な歌劇・楽劇の全幕版は「ニーベルングの指輪」以外のCDはほとんど所持しているが、1,2回聴いただけでCDラックに眠っている。
歌劇・楽劇は音楽・美術・演劇を駆使した総合芸術なので、本来はDVDで観るのが本来の鑑賞だと思うのだが・・・。
なので、筆者の場合はワグネリアンの端っこにでもつけ加えてもらえるだけで十分だと思っている。
■ワーグナーの“官能的たる所以”(さわり)
ワーグナーの作品は「官能的」とよく言われるがまさにそのとおり。
ちなみにイタリア歌劇にせよワーグナーの楽劇にせよ、そのストーリーのほとんどは惚れた腫れたの世界。要するに極めて俗っぽい。なかでもワーグナーのは近親相姦みたいなストーリーもありで、ちょっと“エグい”ところもある。
ところで、ワーグナーを官能的な愛の表現の名人と言う人がいるが、おそらくそれはワーグナーの不倫癖とか女性遍歴からきているのだろう。その女性遍歴は「不倫は文化」などといっていた御仁なんぞは足元にも及ばない。
また、「官能的」と直接関係ないが、人格的に欠陥が大有りで自己顕示欲の塊だったとも言われている。その魂に含まれている言葉を並べてみると、唯我独尊、誇大妄想、ホラ吹き、借金まみれ、夜逃げ、踏み倒し、壮大なる浪費癖、王様をカモにして国家財政が危ないほどむしりまくる、女はかたっぱしから寝取る。何でもあり。そして何と言っても精力絶倫であったとか。いやはや、もはや病的と言われても仕方がない。
と、ネガティブな面が多すぎるのだが、しかし、一旦その音楽の魔力に囚われると“ワグネリアン”にとってはそんなことはどうでも良くなる。
清廉潔癖な御仁は、ドン・ファンで自己顕示欲の塊のようなオッサンの音楽なんかは聴きたくない、と思うかもしれないが、「とにかく一度聴いてみろ」です。とにかく音楽は素晴らしい!
■■ワーグナーの作品■■
この辺りでワーグナーの『歌劇・楽劇』の有名どころを男声合唱曲も絡めて簡単に紹介しておく。
■歌劇『さまよえるオランダ人」■(上演時間:1幕形式の場合で約2時間30分)
ワーグナーが20代後半の頃に作曲された初期を代表する作品。
この歌劇は、中世ヨーロッパに伝わる幽霊船伝説(フライング・ダッチマン※)にもとづいて創られ、1841年にパリで完成し、1843年ドレスデンで初演されている。
ちなみに、この作品の原語タイトルは「Der Fliegende Holländer」。英語タイトルでは「The Flying Dutchman」となっている。
台本の大筋はハイネの小説によるものの、ワーグナー自身のアイデアも随所に見られ、当人が1839年夏にイギリスに渡る際、洋上で暴風雨に遭ったときの苦難の体験が、作品に大きく影響を与えているとも言われている。
※フライング・ダッチマンについて
この名称の謂れは、オランダ人船長を"Flying Dutchman"とする説と、彼の船が『さまよえるオランダ船』とする説、また(呪いがかかる以前から)船の名前が『フライング・ダッチマン号』であったとする説がある。
フライング・ダッチマン号は映画『パイレーツオブカリビアン』シリーズ2作目に幽霊船「フライング・ダッチマン号」として登場している。
≪あらすじ≫
18世紀頃のノルウェー。嵐の日、幽霊船が港に入ってくる。
船長のオランダ人は神を呪った罪で永遠に海上をさまよい、上陸は7年に一度しか許されない。
オランダ人を救えるのは、彼に永遠の貞節を誓う女性だけ。
オランダ人の肖像画に魅入られた船長ダーラントの娘ゼンタは、彼を救うのは自分だと直感する。とうとうゼンタは、本物のオランダ人と出会う。
運命を感じ、見つめ合う二人。
だがゼンタの婚約者を自認する漁師エリックは、彼女の「心変わり」をなじり…。
序曲はまことにドラマチック。何かを予感させるような趣がある。
***とりあえず、「水夫の合唱と幽霊船の合唱」を慶応ワグネルで聴いてください。
慶応ワグネル/第112回定期演奏会1987.12.13/指揮:畑中良輔/ピアノ:三浦洋一・佐藤正浩/独唱:瀬山泳子sp.
https://www.youtube.com/watch?v=5_U9VrIuBuc
<つづく>
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